素朴屋の建築 VOL.01

The Architecture of SOBOKUYA

2026.4.30

土を纏うノラコヤ。 

私が建物を設計するときに、何かをモチーフにしていることに気づいたのは、この野良小屋を作っているときのことだ。施主の話を聞いていると、なんとなく、淡路島の玉ねぎ小屋が浮かんできた。そのイメージで図面を書いていると、私を知る人に話すと、「今井さんにはいつもモチーフがあるんですね」と、指摘されてはたと、気付いた。

淡路島に行ったのは、八年前のことで、玉ねぎ小屋以外で覚えていることは、明石大橋くらいで、写真も残っておらず、淡々と島を通り過ぎていた。
ただ、島の至る所に玉ねぎがぶら下がっており、その鮮やかな茶色と質素な木造の小屋が、使い込まれた農具のようで、印象深かった。

施主からは、「畑をやる家にしたい」という要望だったので、泥の長靴で家に入っても、気にならないような建物にしようと思い、野良という言葉を選んで、玉ねぎ小屋の小屋をくっつけた。

あ、いやどうだろう、施主がなんとなくその名を使い出して、そのまま、その名をつけたような気もする。今となっては、忘れてしまった。

柿葺き、土壁、三和土、濡れ縁など、あまり淡路の小屋とは似ていないのだが、玉ねぎをたくさん吊れそうな玄関の貫が、島の風景を少し残している。

天井を低く。
空間を暗く。
要素を少なく。

施主には、茶室のようなことを要望されたので、ニヤニヤして図面を引いた。

建築は粛々と進んでいったが、土が乾くのに時間がかかり、やっぱりというか、なんというか、ひと月ほど工期が伸びた。建物は、寒い時期に引き渡したので、土壁に残る水分が、ガラスを結露させ、窓枠に水たまりができたことには、辟易した。      

ただ、引き渡し後に感じる建築のブレようなものはなく、生活が始まり、道具として小屋が使われることにより、使い込まれた農具のような感覚は、今後出てくるだろうと思っている。
 
建築に機能がある限り、使いやすい道具のような建築になることは、理想的であるが、それは、施主と作り手の感覚が近く、もし、それが、離れようとすることがあれば、互いに寄り添おうとすることで、古い百姓とその手に馴染んだ鍬のような関係になるのではないかと思った。

設計

今井久志

竣工年月

2025年3月

所在地

山梨県北杜市

構造

木造

延床面積

92.75㎡

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